数少ない日本原産の植物のひとつで、春先に伸びる独特の香りを持つ新芽は山菜として食用になります。粘り気のある木でよくたわむので、簡単に引き寄せて採れます。北海道から九州まで自生しており、最近は耕作放棄地を利用して、栽培もおこなわれています。山菜好きの方は苗も売られていますので、育てて収穫するのも楽しいですね。
コシアブラの特徴
ウコギ科ウコギ属の落葉高木です。
北海道、本州、四国、九州の深山のブナ林帯から里近くの雑木林や林縁、林道脇など日当たりのよい明るい斜面に多く自生しています。
樹高は7 ~ 10mくらいで、時には20mに達するものもあります。枝分かれは多くなく、横に広がらず上に伸びる傾向があります。樹皮は灰白色でなめらかで、成木になるとブナの幹のように地衣類の付着が目立ちます。
春に新芽が伸びまじめます。芽が伸びると、袴の部分から先に葉と共に紫がかった葉の柄が数本まとまってまっすぐ上に伸び、葉がひろがり、柄の部分が広がります。葉は5枚の掌状複葉で、トチノキに似ていますが、本種は小葉に柄があるので区別できます。
花期は8月~9月頃で、ウコグ科の特徴である線香花火のような花序で黄緑色です。
秋になると、5枚の小葉は白っぽく半透明な黄色に黄葉します。最後は白くなって落葉します。果実は果実は4~5mmの球形で、11月頃に黒く熟します。ツグミやヒヨドリなどの野鳥や、ツキノワグマなどの好物です。
材が柔らかく、色も白いので「豆腐の木」と呼んでいる所が多いそうです。木工工芸品の笹野一刀彫(おたかぽっぽ)を作る際の材料等に用いられています。ウコギ属で有名な植物は、ウド(タラノキ属)や、タラノキ(タラノキ属)があります。
山菜として
春の新芽が山菜として食用になります。自生している地方や標高によって収穫時期はずれますが、四国や近畿、中部あたりの平地では、4月初旬頃には芽が出始めます。東北あたりですと、5月初旬頃から下旬頃にかけてが旬となります。更に標高の高い高山などでは6月一杯くらいまで採れます。
付け根のハカマを取って使います。
アクがあるので天ぷらにされる事が多いですが、アクを抜いて、おひたしや和え物などにも調理され、塩漬けにして保存食とされる事もあります。独特の香りがあり季節を感じる山菜です。収穫後はあまり日持ちがしません。香りが大切な食材なので、新鮮なうちになるべく早く食べましょう。
育てるには
園芸品種ではなく日本各地に自生している植物です。化成肥料などはあまり適当ではなく、酒粕や、骨粉などが望ましい様です。一般的には苗を植えておくだけでも成長しますが、水はけと通気性のよい土が適しています。苗から育てる場合も、種から蒔く場合と同様、水はけと通気性の良い土を好みます。
■山菜として芽を多く収穫するには
一本のコシアブラの頂芽を増やすことが大切になります。1m前後で幹を剪定し、低い位置からの分枝を促すようにします。3 年目で枝数が2~3 倍に増えますので、芽の発生する数が増える事になります。
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