ハエだけを食虫する訳ではないのですが、英名が「女神のハエとり罠」という名前から来ている様です。捕虫葉と呼ばれる二枚貝のような形の葉を広げ、その中にたまたま入ってしまった小さい昆虫やナメクジなどの小動物も捕食します。寒さにはそこそこ強く、冬場に用土が多少凍る程度であれば問題ありません。
ハエトリグサの特徴
モウセンゴケ科ハエトリグサ属の多年草です。
栄養分が極端に少ない湿地帯で生き延びてきた植物です。根以外から養分を得るため虫を捕えるという独自の進化を遂げました。北アメリカ原産でワシントン条約で球根の輸出入は全面禁止されています。
ごく背の低い草本で、茎は短縮していて地中にあってわずかに横に這い、多数の葉を円盤状に出します。葉の付け根は肥大し、地下茎とともに鱗茎型の球根を形成します。葉には長い葉柄があり、先端に捕虫器になった葉を着けます。葉柄は扁平で幅広く、地表に這うか、少し立ち上がります。
捕虫器は二枚貝のような形で、周辺にはトゲが並んでいます。
5月~7月頃に花茎が伸びて白い花を咲かせます。自家受粉で容易に結実し、黒いゴマ粒状の種が出来ます。秋頃から新しい葉を出さなくなり、通常冬は休眠します。
■食虫植物 ハエトリグサの花に受粉させて種を作る!【食虫植物TV】(約8分)
食虫植物TV 様
株の形状により2系統に大別され、葉が上向きに立ち上がって展開するものは「エレクタ系」、葉が地面に張りつくように平たく展開するものは「ロゼット系」と呼ばれます。組織培養や人工交配などによってハエトリグサには様々な品種があり、真っ赤な色を持つものや棘が変形したものなどあります。
■ハエトリグサを館長が特別解説!【咲くやこの花館】(約6分)
咲くやこの花館【公式】動画チャンネル 様
捕食のからくり
虫を捕らえる瞬間を肉眼ではっきり確認できる食虫植物は、この種だけと言って良いでしょう。虫を「おびき寄せる性質はなく」たまたま葉にとまった虫を捕える程度で、捕食も多くは失敗します。
捕虫器の内側には3本ずつ(4本のものもある)の小さな毛(感覚毛)が生えています。昆虫などの獲物が2回または2本以上の感覚毛に同時に触れると、あっという間に葉が閉じ、数日経過するとまた開きます。
捕食出来た場合は、1日ほどたつと葉は完全に閉じられてトゲは逆に外に反り返り、葉の内側で捕まえた獲物を押しつぶし、葉から分泌される消化液でゆっくりと獲物を溶かします。およそ10日で養分を吸収し、葉はまた開いて獲物の死骸を捨て、再び獲物を待ちます。葉には寿命があり、一枚の葉が捕らえる回数は4-5回くらいまでです。
葉は開閉することにより多大なエネルギーを消耗します。1対の葉は2~3回の開閉運動が限度でその後枯れてしまいます。故意に刺激を与えて開閉運動を繰り返させることで葉が早く枯れてしまいますので、あまりいじりすぎない方が良いでしょう。最悪の場合、株が消耗して枯れてしまいます。
育て方
浅い湿地に自生する植物で、水切れを極端に嫌います。通気性と水保ちを考え、水ごけを使うのが一般的です。常に湿らせた状態で栽培するので、用土の水ごけが傷みやすいです。傷んで腐ってしまわない様に1~2年に1回植え替えます。
4~9月の生育期は屋外の半日陰の場所で育てましょう。高温に弱いので、特に真夏の直射日光には注意が必要です。虫を食べる植物ですが、虫を与えなくても元気に育ちます。基本的には光合成で育ち、捕虫は肥料の代わりのようなもので、肥料がなくても特に生きていけます。花はタネを実らせると株が消耗して弱ることが多いので、タネをとらない場合には早めに花茎を切ると良いです。
秋頃から新しい葉を出さなくなり通常冬は休眠しますが、気をつけたいのは冬越しの温度です。中途半端に暖かい場所では完全に休眠せず、中途半端にエネルギーを消耗し、春の生育スタートダッシュが鈍ります。休眠温度は5℃程度を目安にしましょう。
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