飛鳥時代の遺跡で見つかった木簡にワサビに関する記述がある事から、古くから日本人はワサビに注目していたようです。最近では海外でもブームになり栽培を始める所も出てきました。ご自宅でも短い期間なら簡単に栽培できる「畑ワサビ」も入手できます。魅力いっぱいの香辛料です。
ワサビの特徴
アブラナ科ワサビ属で、日本原産の多年草です。
北海道、本州から九州に掛けて分布しており、深山の渓谷や渓流に自生しています。
現在では野生は少なくなっており、主に静岡県や長野県の清流や涼しい畑で栽培されています。
最近は、日本食ブームで寿司などが人気になり、イギリスやオーストラリア、カナダで栽培が盛んになってきました。
根茎は太い円錐形で横筋があり、細根を出します。
根生葉は束になって生え、長さ10~20cmの長い葉柄があり、葉実は径5 ~ 13cmの大型で円形に近い心形で光沢があります。
花期は3 ~ 5月で、根茎の頂から長さ30 cmくらいの茎が立ち、茎頂や上部の葉腋に、白色の十字型で花径3mmほどの小さな花を総状につけます。
わさびに含まれる栄養は、炭水化物・食物繊維・葉酸・カルシウム・マグネシウム・鉄分・リン・亜鉛・ビタミンB・ビタミンC・ビタミンE・ビタミンKなど豊富です。辛味成分であるAITCは抗菌作用があり、食中毒予防にも効果があるとされる成分です。
根茎を擦って利用するだけではなく、葉や茎も湯がいたり、漬物に利用されます。
栽培方法により、名前が変わります。
ワサビの清流生育には、気温が8〜18℃、水温は10〜14℃と1年にわたって変化の少ない流水が必要で、この栽培方法を「水わさび」と呼びます。普段お寿司やお刺身の薬味として利用しているものは、この水わさびの根茎部分です。この方法ですと栽培できる場所が限られますし、栽培管理も手間暇がかかります。
これに対して、直接水を利用しないで、保育から収穫までを畑で行う方法を「畑ワサビ」と呼びます。水ワサビに比べ品質は落ちますが、温度と湿度管理が整えばどこでも栽培することが可能です。ホームセンター等でポット鉢で販売されているのは「畑わさび」になります。
畑ワサビは株分けによる栽培を続けると、数年で「退化現象」と呼ばれるウイルス感染に伴う成長障害や病気に掛かりやすくなるため、栽培農家は成長点培養による「ウィルスフリー」苗を入手して栽培しています。
名称は違いますがどちらも同じ品種になります。
尚、同じアブラナ科ですが、同じ様に根茎部分を擦ることで、「ツーン」とした刺激臭がする西洋ワサビ(ホースラディッシュ)という安価な作物があり、ワサビの代用にも利用されます。
西洋ワサビと分ける意味でワサビを「本ワサビ」と呼ぶ事があります。ただし練りワサビの加工品などは、50%以上ワサビが入っている場合、他の添加物の内容表示をしなくても良い規則になっているので少量(全体の50%未満)の西洋わさびを混ぜても「本ワサビ」と表示できる事に注意が必要です。
ワサビの擦り方にはコツがあります
ワサビは細かく擦る事で、酵素が酸素と反応して初めて、独特の香りを作り出します。
そのため、よりキメが細かく擦る事が出来る「鮫皮」のおろしが最高と言われています。
ワサビ独特の風味は揮発性なので、擦ったらすぐに利用しないと「気が抜け」て本来の刺激が少なくなってしまいます。味噌で和えたり、麹と合わせた「ワサビ漬け」はある程度長い期間、辛みや「ツーン」とした刺激を保つことが出来ます。
育て方
一般のご家庭の場合は、プランターに植えて育てる方法が簡単に楽しめます。
気温は8〜18℃と涼しい場所で、薄日があたる環境であることが大切です。川砂を混ぜ込んだ土が必要です。病虫害が発生し易いので、プランターは地面から離して配置したり、新しい園芸用土で栽培すると多少の病気発生リスクが軽減できます。
栽培を始める時期は、9〜10月ごろが植えつけに適しています。植えつけからおよそ2年で収穫ができるようになります。
本来は水が常に流れる環境が栽培で望ましいのですが、自家栽培の場合は難しいため、気温と水管理をしっかり行うようにしましょう。
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